感染性胃腸炎

微生物(細菌,ウイルス,原虫など)の経口感染によって起こり、下痢や悪心,嘔吐、時に腹痛,発熱などの症状をきたす疾患群を指します。汚染された水や食物の飲食を介した食中毒として起こる場合や、集団発生する場合もあります。

感染性胃腸炎の原因

1. 細菌性
夏に多い傾向があり、重症化することも多いです。代表的なものには
① 病原性大腸菌
② カンピロバクター菌
③ サルモネラ菌
などがあります。
2. ウイルス性
冬から春にかけて多く乳幼児では重症化しやすいです。代表的なものには
①ノロウイルス
②ロタウイルス
などがあります。
3.その他
寄生虫や原虫が原因ですが、日本では比較的まれです。代表的なものには
①アメーバ赤痢
②ジアルジア(鞭毛虫症)
③クリプトスポリジウム下痢症
などがあります。

ここではウイルス性胃腸炎についてのみお話しします。

ロタウイルス

症状
血便にならない下痢、嘔気、嘔吐、重症では脱水、通常は3〜8日程度で軽快します。乳児冬季下痢症、白色便性下痢症と言われてきましたが、最近は白色便になる事は少なくなってきました。また、流行時期も冬から春先に移行してきたと言われています。乳幼児の下痢症の中で最も頻度が多いものでしたが、ワクチンができたおかげでノロウイルスの方が多くなりました。

潜伏期
1〜3日

予防
糞口感染します。患児の周囲の机などの表面やおもちゃの表面にも見つかります。
①ワクチン 詳しくは予防接種の欄を参考にして下さい。
②手洗い、とくにトイレ、おむつを替えた後、また、食品を扱う前にすることが大切です。
③次亜塩素酸ソーダによる表面の消毒 約1リットルの水にテーブルスプーン一杯のキッチンハイターを入れます。その液体で2分間以上消毒します。
ミルトン

治療
ロタウイルスに対する治療法はないため対処療法だけになります。ノロウイルスに対する治療法も同じですので、あとで一緒にお話しします。

ノロウイルス

症状
突然発症する嘔吐、それに続く水様性下痢、腹痛、嘔気が特徴的ですが、嘔吐を伴わず下痢のみのこともあります。症状は通常24〜60時間程度持続します。胃腸症状の他に筋肉痛、全身倦怠感、頭痛などを伴うこともあります。

潜伏期
12〜48時間

伝搬様式
糞口感染します。吐物などが乾燥すると空気中に浮遊するため、空気感染(飛沫核感染)する可能性も言われています。また、牡蠣などの二枚貝からの感染もあります。

予防
① 手洗い、とくにトイレ、おむつを替えた後、また、食品を扱う前にすることが大切です。
② 次亜塩素酸ソーダによる表面の消毒 約1リットルの水にテーブルスプーン一杯のキッチンハイターを入れます。その液体で2分間以上消毒します。
ミルトン
③ ワクチンは現在開発中のようです。

ノロウイルス感染・予防法と対処法

治療
根本的な治療はありません。脱水の予防が中心の対処療法だけになります。

感染性胃腸炎によい治療の9つの柱

1)脱水の水分補正には経口補液剤(ORS)を用いる。
2)使用ORSは低張液(Na 60mEq/l, ブドウ糖74〜111mEq/l)。
3)ORSによる脱水補正は急速に(3〜4時間)で行う。
4)食事の再開は早く行い、固形食を含む正常食とする。
5)治療乳は不要。
6)希釈乳は不要。
7)母乳栄養児では母乳を続ける。
8)治療中の水分喪失はORSで補正する。
9)不必要な薬物は使用しない。

つまり、薬は不要、点滴はせず出来るだけ口から水分を摂取すること、ミルクは薄めたり乳糖の入っていないミルクを使用する必要がないこと、食事は脂肪を含まなければ通常食で良いということです。ナウゼリンなどの制吐剤、ビオフェルミンなどの整腸剤は効果が認められていません。最近では漢方薬の五苓散が効果があるとも言われています。

医療機関受診が必要な下痢症とは

① 6ヶ月未満、8kg未満の小児
6ヶ月未満の子は腎臓における濃縮力が低く脱水になりやすい、また、そのためORSの使用が出きません。

② 早産、慢性疾患をもつ児、現在、何かの病気にかかっている児
基礎疾患が悪化しやすく、胃腸炎も重症化しやすいです。

③ 38℃以上の発熱がある3ヶ月未満の児、あるいは39℃以上で3〜36ヶ月の児
これらの患児では重度の病気が隠れている割合が高いと言われています。

④ 肉眼的血便のある児
細菌性胃腸炎の可能性が高くなります。乳幼児、特に2歳以下では菌血症になりやすいと言われています。

⑤ 下痢の量、あるいは回数が著しいものが脱水になりやすいということです。

⑥ 下痢の持続が長いもの(14日以上)
長引く下痢とは2週間以上の下痢のことを言います。1週間位の下痢は当たり前です。

⑦ 嘔吐の持続が長い児
通常嘔吐はナウゼリンなどの制吐剤を使用しなくとも半日、長くても1日弱でとまります。それ以上持続するときは検査や点滴が必要になることが多いです。

⑧ 眼球陥没、涙の減少、粘膜乾燥、尿量減少などの症状を伴う児
ORT(経口補水療法)は軽症、軽度の中等症の脱水までに有効です。上記の症状は中等症以上の脱水が疑われますので点滴が必要になる可能性が高くなります。

⑨ 意識レベルの変容
高度の脱水などの合併症を併発している可能性があります。ときには救急車を呼ぶ必要があるかもしれません。

⑩ ORT(経口補水療法)を施行しても反応の悪い児、あるいはORTを施行できない児
点滴などの治療の必要性が高いと思われます。

現在、日本でもガイドライン作成中です。発表されましたら追加いたします。

対処法


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